相続とは、お亡くなりになった方の財産や負債を承継することです。しかしいざ相続をする段階になると、お亡くなりになった方がどのような財産を保有していたのか、あるいは負債を抱えていたのかを正確に把握していない相続人の方は少なくありません。なぜなら親族と言えど他者の財産です。相続人が亡くなった方の財産を直に管理をしていたという事情があればともかく、ご自身が自由に処分できる財産でなければ、なかなか具体的に把握できないものです。
現在の日本の制度では、亡くなった方の財産や負債の記録を一覧表示や検索できるような制度はありません。亡くなった方が、生前に財産目録などを作成して財産や負債の記録が残っていれば良いのですが、そのような記録は残ってはいない事がほとんどです。従って相続財産の調査は、根気強く地道に行う必要があります。以下代表的な財産の調査の方法をご紹介いたします。
不動産
高額な財産であり、税金が課税されることが大半です。そのため年に一度固定資産税の請求書が送付されることもあり、最も把握しやすい財産と言えます。しかし課税されない小さな道路部分の持分などは見落とす事が多いです。そのため権利書が存在するのであれば権利書の内容を確認してください。権利書には小さな道路部分も記載されているからです。また「名寄帳」という市役所で取得できる書類も、同じ市内であれば市内で保有している不動産が全て記載されています。不動産の数が多い場合は名寄帳は必ず取得すべきです。
預貯金
預貯金は入出金が頻繁に行われている通帳であれば存在を把握しやすいです。しかし定期預金通帳、定期預金証書などは通帳を使用して支払いなどを行う事がほとんどないためその存在を認識できない事があります。定期預金は金融機関から年に数回ハガキで現在の預金高などを告知してくることがあります。郵便物などを頼りに探すことができます。また亡くなった方と相続人の戸籍謄本を持参し、金融機関に通帳があるか残高の照会をする方法もあります。
株式等
株式は配当のある銘柄でああれば通帳を地道に調べると年に1~2回配当金が通帳に記載されることがあります。またこちらも郵便物が年に1~2回送付されてきますので郵便物を確認してください。株式についても亡くなった方と相続人の戸籍謄本を証券会社の持参すれば、取引があったかどうか教えてくれます。
負債について
負債などの借金についても、まずは通帳を調べてみる事が重要です。毎月定期的にまとまった金額が引落し又は振り込まれているかどうか確認してみてください。また郵便物などを調べてみて督促状のようなハガキがきていないかをチェックしてみてください。さらに有効な借金の調査手段として「信用情報開示請求」という手続きがあります。信用情報の開示先の機関はCIC、JICC、銀行協会と3か所ございます。こちらも亡くなった方と相続人の戸籍謄本使って手続きを行う事ができます。ただしご注意いただきたいのが、債権が他者に譲渡されてしまった場合は信用情報に記載されません。典型的なのが○○債権回収株式会社といった、譲り受けた債権を回収する会社です。これらの会社は信用情報に登録をしていないため信用情報を取得しても記載されていません。債権回収会社から督促のハガキが届くまで借金の存在を覚知する事が困難と言えます。