抵当権の債務者が亡くなり債務者が団体信用保険に入っていなかった場合、債権は消滅しないため抵当権者である債権者は、債務者の変更登記をすることを求めることがあります。法律上は、金銭債務は遺産分割の対象ではないため法定相続分のとおり債務を承継するとされています。したがって、遺産分割協議で特定の相続人に債務を承継させる旨の合意をしても債権者には主張できません。しかし実務では、債権者の承諾があれば、その遺産分割協議に基づいて特定の相続人を債務者とする登記ができます。具体的には、下記の2パターンがあります。
- 遺産分割協議の前に法定相続人への債務者変更登記をしていた場合
「年月日(遺産分割協議が成立した日)遺産分割」を登記原因とする特定の相続人への抵当権変更登記 - 遺産分割協議の前に法定相続人への債務者変更登記をしていない場合
「年月日(債務者が死亡した日)相続」を登記原因とする特定の相続人への抵当権変更登記
上記は遺産分割協議に基づき債務者変更をするケースですが、遺産分割協議によらず債務引受契約によって債務者の変更をする場合もあるため、どの方式で債務者を決めるのかは債権者との事前の調整が必須であると思います。