最近はコロナの影響なのか、遺言の作成に関する問い合わせが増えているように思います。遺言を作成をしたいというきっかけはともかく、築き上げた財産の行方をご自身の意思によって明確にすることは良いことだと思います。
相続人が先に亡くなってしまった場合
遺言は、遺言によって財産を取得する相続人より、遺言を遺す方が先に亡くなることを前提として作成します。では遺言者より先にお子様などの相続人が亡くなってしまった場合に遺言の効力はどうなるのでしょうか。
- 土地建物は妻Aに相続
- 預貯金は長男Bと次男Cに相続
上記の遺言書の場合に土地建物を取得するはずの妻Aが先に亡くなってしまうと、先にAが死亡した場合に言及する予備的遺言にするか新たな遺言を作成しない限り法定相続分通りの相続となります。このケースでは長男Bが2分の1、次男Bが2分の1の割合で土地建物を相続をします。
相続の順番が遺言者が想定していたものとは異なっていますが、長男A、次男Bという遺言者の直系のお子様方が最終的に土地建物を相続していて、必ずしも遺言者の意思に反する結果とはなっていないと思われます。
会社経営などを引き継ぐために株式を相続させたい場合
遺言者が会社を経営していて遺言者が信用できる共同経営者や、副社長などに株式を相続させたい場合があります。株式とは会社経営に重大な影響を及ぼす株主総会などで議決権を行使できる権利のことです。保有株式の割合によっては取締役などの会社役員を解任できてしまいます。そういった事態を防ぐためにも株式を相続をさせたい人が亡くなった場合は、新たに遺言を作成することを強くお勧めします。
遺言が公正証書によって作成していた場合にすぐに再度公証役場に行くことが難しいようであれば、自筆証書遺言を作成すべきでしょう。自筆証書遺言ならばご自宅でも作成が可能です。自筆証書遺言でも後で作成されたのであれば公正証書遺言に優先します。つまり作成された日付が一番新しい直近の日付の遺言が優先されるということです。
また別の方法としては予備的遺言という遺言の方法があります。この方法は例えば相続人Aが遺言者より先に亡くなった場合には、BがAに代わって取得するといった内容の文を遺言に盛り込んでおくのです。この方法なら論理的にはBが先に亡くなっていた場合はCへ、Cが先に亡くなっていた場合はDへといった形で備えることはできます。しかしこのような形の遺言は複雑になります。こういったケースでは新たに遺言を作成したほうが良いかもしれません。
現代の日本では平均寿命が延びている傾向が今もなお続いております。こういった状況では今後100歳の親より、70代の子が先に亡くなってしまうことも珍しくなくなることでしょう。遺言の内容をこれまでよりしっかりと検討する必要があるのではないでしょうか。