相続が発生した場合、相続財産と共に借金などの負債があればその返済義務も相続します。相続財産よりも負債の額が多ければ相続放棄を検討する方が大半ではないでしょうか。家庭裁判所で手続きを行えば負債の返済義務を免れることができます。ここで注意したいのが、相続放棄をしたことにより他の親族に返済義務が相続されてしまうことです。
配偶者である夫が亡くなった場合
条件
相続人 :妻と子
相続放棄:子のみ
相続放棄後の相続人
妻と亡くなった夫の両親
夫の両親が共にすでに亡くなっている場合は祖父と祖母
上記のケースは実際には稀です。子だけが家庭裁判所で相続放棄をして妻が相続することはほぼありません。また夫が先に亡くなって両親が存命している事も決して多くはありません。(ただし現在の日本は長寿化の傾向にあり、夫が亡くなった時に夫の両親のいずれかが存命しているケースが今後は増えてくると予想しております。)
条件
相続人 :妻と子
相続放棄:妻と子
相続放棄後の相続人
亡くなった夫の両親
夫の両親が共にすでに亡くなっている場合は夫の兄弟姉妹
さらに夫の兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は兄弟姉妹の子
夫の相続人であった妻や子が相続放棄をすると、夫の兄弟姉妹又は兄弟姉妹の子が相続人になるケースがほとんどです。このケースの厄介な点は、当事者が5~10人以上になる可能性があることです。また相続人となった兄弟姉妹は兄弟である亡くなった夫の経済状況について把握できていないことが多く、亡くなった夫の妻と子が相続放棄をしたことを兄弟姉妹に伝えないと、相続人になったことを知るのも困難だということです。亡くなった夫の債権者が調査をした結果、兄弟姉妹に借金の請求書が届いて初めて相続人になったと知ることもあります。
相続放棄は民法で認められた権利
兄弟姉妹に相続放棄をしたことを伝えたときに、中には「相続放棄をして責任逃れをするな」とか「こっちも相続放棄をするからその費用を出せっ」とお怒りになる人も少なからずいらっしゃるようです。しかし相続を放棄する権利は民法で認められた重大な権利です。責任逃れでは決してありません。また兄弟姉妹の方が相続放棄をする際に最初に相続放棄をした妻と子がその費用を出さなければならないという法律は存在しません。兄弟姉妹が相続放棄という自己の権利を行使するのに、妻と子がその費用を支払わなければならないというのはおかしな話だからです。