故人の誕生から死亡までの戸籍が必要
相続に関連する不動産の名義変更、預貯金の払戻手続、株式の移管手続き等を行う際には、一般的に故人の誕生から死亡までの戸籍すなわち原戸籍、除籍を取得する必要が生じます。こうした戸籍は原則として、管轄する各市区町村で手に入れることが求められます。例を挙げれば、A市に戸籍の記録がある場合は甲県A市で、またB市に戸籍の記録があれば乙県B市で取得しなければなりません。
この戸籍の取得は、多くの転居を経験した方にとっては、やや手間を要する作業となります。例えば、甲県A市から乙県B市、そして丙県C市、丁県D市へと移り住んだ場合、それぞれの市の戸籍を取得しなければならないのです。遠方の市区町村の場合、窓口まで直接足を運ぶことは困難で、郵送による取得が一般的です。しかし、日本の法律では現金を封筒に同封しての郵送が認められておらず、定額小為替の購入が必要となります。また、取得した戸籍を精査し、次にどの戸籍を取得する必要があるかの判断は取得者が行わねばならず、戸籍の取得量が多いほど負担も増えてしまいます。特に、兄弟姉妹間での相続の場合、戸籍の量は非常に多くなりがちで、これを一般の方が全て集めるのは困難な作業と言えます。
革新的な制度
そんな相続人の負担を軽減するため、令和5年から(具体的な導入日は未だ確定しておりませんが)、最寄りの市区町村の窓口で日本全国の戸籍が収集できる制度が導入される予定です。これは、戸籍収集の負担が大幅に軽減されるという、大変革新的な制度と言えます。
新制度の条件
この新制度を活用するためにはいくつかの条件が存在します。
- 戸籍取得の申請は、最寄りの市区町村の窓口で直接行うこと。郵送による申請は許可されておりません。
- 司法書士や弁護士等の専門家が職権を行使して戸籍を取得することも許可されていません。相続人本人が直接窓口で取得することが求められています。
※この点については、より柔軟な対応が可能な制度にしてほしいと考えています。必要な戸籍を適切に解釈する能力は必要ですが、その判断を専門家に任せることで相続人の負担を軽減できるはずだからです。
現時点ではまだ万能とは言えないかもしれませんが、この新制度は間違いなく相続人にとって戸籍の収集時間と負担が大幅に軽減されるものです。これにより相続手続きの効率化が期待でき、相続人の皆様にとっては大変ありがたい制度となるでしょう。