2019年8月9日、最高裁判所が初の判断を示しました。
「債務を知ってから3ヶ月以内であれば相続放棄できる」
債務を残して死亡した伯父について、相続放棄をしないまま父親が死亡し、その債務を承継した子供は、いつまで相続放棄できるのかが争われた訴訟の上告審判決です。
民法第915条では、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に、相続について、単独若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と定められています。
この裁判では、再転相続があった1次相続人である父親が、相続の承認または放棄の意思表示をしないまま死亡した場合、2次相続人である子供の熟慮期間(放棄できる期間)である3カ月の起算点は、いつであるかが争点でした。つまり、父親が死亡したことを知ったときなのか、父親が伯父の相続をしていたことを知ったとき(子供自身が相続人になったことを知ったとき)なのかという点です。
通説では、父親が死亡したことを知ったときでした。しかし今回の最高裁判所の判決では、親族の債務を相続していたことを知らないまま熟慮期間が始まるのは、相続の承認または放棄を選ぶ機会を保障する民法の趣旨に反すると指摘し、起算点は子供自身が相続人になったことを知ったときであると判断しました。
今回の判決は、相続人が有利になるもので、今後、債権回収の実務や相続手続きに少なからず影響を与えることでしょう。