複数の相続人が相続によって不動産を取得するケースは珍しくありません。こういったケースでは多くの人が不動産の売却を選択します。特に兄弟姉妹の相続では相続人が多数になる傾向があり、多数の相続人が不動産を取得しても、特定の使い道がなく放置されてしまい、不動産が宙に浮いたような状態を防ぐため売却を決断なさるようです。もっとも、相続した当事者の数が多いと売買契約に大きな負担がかかってしまいます。売買契約書には原則として不動産の所有者全員が署名捺印をする必要があるため、売買契約の日程の調整に手間と時間がかかってしまうからです。
相続人の代表者を決める
そこで不動産の売却手続きを行う相続人の代表者を決めて、その代表者に売買契約手続きの委任をするという形で売買契約を進めることが可能です。この方法では多数の相続人の日程の調整を行う必要がなくなります。あくまで売買契約手続きの委任を受けた代理人が署名捺印をすれば良いからです。この方法は不動産の所在地の遠方に相続人がいる場合などは特に良い手段かと思われます。
相続人の代表者は信頼ができる人に
代理人に任せるこの方法は委任を受ける代表の相続人が信頼できることが条件となります。売却手続き後、委任をした相続人の口座に売却代金を振り込んでもらう必要があるからです。また、不動産の売買契約など非日常の手続きを遂行できる事務能力も求められます。この2点をクリアしている相続人であれば、代理人を決めて売却するこの方法は手続きを円滑に進めるのに有効かと思われます。
代表相続人1名のみを登記する
相続人の代表者を決めて手続きを進める方法として、相続人全員持分に応じて登記をするのではなく、代表相続人1名のみを登記する方法があります。この方法では所有者が単独名義のため他の相続人から委任を受けるという概念が生じません。売買契約書の記載も代表者の氏名だけを記入すればよいため、書類の署名の負担が大きく軽減されます。代表相続人が不動産を売却後に売却代金を各相続人に分配する事となります。ただしこの方法は形式的とはいえ不動産を代表相続人の単独名義で登記されるため、その売却代金を不動産の名義人とならなかった他の相続人に分配をすると、贈与税の問題が生じる可能性があります。遺産分割協議書に不動産の売却代金を分配する点について明確に記載をするなどの注意が必要となります。また税理士との打ち合わせも十分に行うべきです。