相続における負債の問題と認識の難しさ
人がお亡くなりなった際にほとんどの場合では相続人の方がいらっしゃいます。相続という法的効果が生じて不動産や預貯金など価値のある財産を相続します。しかし相続では価値のある財産だけでなく、負債も相続しているケースがほとんどです。例えば電話料金、水道光熱費の支払い義務なども相続しています。しかし水道光熱費の支払いでは負債の額が低い事と日常の生活に必要な支払いのため負債を相続したという感覚になりにくいのでしょう。そのため負債を相続したという自覚なさっている人はほぼいないのではないでしょうか。
相続放棄を検討する動機と負債の可視化の難しさ
それでは相続放棄をご検討なさるお客様はどういった動機で相続放棄を検討なさるのでしょうか。それは消費者金融などから多額の借り入れがあるなど負債の存在が顕著な場合に相続人の方は相続放棄をお考えになるかと思われます。
ところが亡くなった方の負債の存在は意外なほど可視化が容易ではありません。いくら親族といえど他者の財産状況など把握していない事が大半です。亡くなった方と同居をしていて消費者金融から督促状のハガキが届いてたなどの事情が無い限り負債の存在を知る事は困難といえます。
そのため亡くなった方に多額の負債が存在していたにもかかわらず相続放棄の手続きをせずに、相続人への債権者からの督促によって初めて亡くなった方に多くの負債が存在していたことを知ったというご相談を受ける事が多々ございます。
相続放棄の期間と債権者からの督促後の手続き方法
相続放棄の期間は原則として亡くなった方が死亡してから3ヵ月以内に行わなければなりません(子供が相続人で子供が親の相続放棄をして親の兄弟姉妹が相続人になった場合には、子供が相続放棄の手続きを完了したのを親の兄弟姉妹が知った時から3カ月以内です)。しかし債権者が相続人の調査をして相続人を特定してから、その相続人あてに督促状を送ってきた場合には、3カ月間が経過している事が多いです。その場合には相続放棄ができないのでしょうか。
3ヵ月経過後に亡くなった方の負債の督促があった場合には、相続人は負債の存在を把握できず熟慮する機会がなかったため、相続放棄を認めてもらえることが多いようです。こういったケースでは相続放棄の手続き期間の起算点は亡くなった被相続人の債権者から請求があった日からとなるようです。
兄弟姉妹の相続における負債問題と相続放棄の重要性
特に兄弟姉妹の相続では、それぞれが自立・独立して生計を維持しており、親子間の相続よりも、亡くなった兄弟姉妹の財産状況を知る事がより困難です。そのため亡くなった被相続人の債権者から督促がきましたというご相談は兄弟姉妹の相続人の方が多い傾向にあります。兄弟姉妹の相続では亡くなった兄弟姉妹と疎遠であったため、亡くなったことと負債があったということを督促で初めて知るケースも珍しくありません。そのため心理的な動揺も小さくないと思われます。しかしそういった事態を打開するために一度専門家にご相談をいただけたらと思います。また相続放棄は時間が限定されている手続きです。お早めに専門家にご相談する事をお勧めいたします。