不動産の分筆登記をご存知でしょうか。分筆という語感の通り不動産を分割して独立した土地に分ける登記のことをいいます。例えば100坪のAという土地を、50坪のB土地と50坪のC土地に分けるような登記を「分筆の登記」といいます。分筆の登記をすればB土地とC土地は完全に独立した不動産となるため、別々に売却をすることができるようになります。また、家屋もそれぞれ建てることができます。不動産会社などが面積の大きな土地を分割して売却するときに使われる手法です。
上記で述べたように分筆の登記の最大の特徴は、分筆した不動産を別個独立の不動産にすることです。これにより、それぞれを個別に売却することが可能となります。ただし、共有の土地を分筆した際には注意が必要です。分筆の登記をすれば別個独立の不動産になるといっても、共有の土地を分筆をしても分筆後の土地も共有のままということです。
A土地を甲さんが2分の1、乙さんが2分の1の割合で所有していたとします。A土地をB土地、C土地に分筆をして2つに分けても、分筆後の土地はB土地甲さん2分の1、乙さん2分の1の割合で所有、C土地を甲さん2分の1、乙さん2分の1の割合で所有となります。
不動産が共有である以上、問題となるのは「使用方法や売却において、甲さんと乙さんが意見を一致させ、足並みをそろえなければならない」という点です。どちらかが勝手に土地の上に家を建てたり、売却処分(自己の持分だけの売却は可能ですが、実際には買主を見つけるのは非常に困難です)を行うことはできません。
共有状態を解消する手段として、互いの持分を交換する登記(共有物分割を含む。)や、売却、贈与する登記があります。しかし、この方法にはデリケートな税金上の問題をクリアする必要があり、さらに登記の費用が高額になる場合もあります。すでに共有状態である場合は、解消するためには当事者間の合意が必要で、どちらかが協力しない場合は共有物分割訴訟等の裁判手続きをしなければなりません。
もっとも、現時点では共有状態ではないものの、将来的に共有状態になる可能性があるケースでは、上記の交換、売却、贈与といった登記を回避できる場合があります。それが可能となるのは、所有者が亡くなり相続が発生するタイミングです。
例えば、A土地を所有していた甲さんが亡くなり、相続人として乙さんと丙さんの2名がいたとします。この場合、相続による名義変更を平等な割合で行うと、A土地の所有割合は乙さんが2分の1、丙さんが2分の1の共有状態となります。その後、共有状態を解消するために分筆登記を行う場合、共有物分割、交換、売買、贈与といった登記が必要となります。
しかし、A土地を相続による名義変更の前にあらかじめ分筆し、B土地とC土地の2つに分けた上で、B土地を乙さんが、C土地を丙さんが相続による名義変更を行えば、甲さんから相続したA土地を乙さんと丙さんが共有する状態を避けることができます。
この方法が活用されるのは、亡くなった方が家屋を複数建てられるような広い土地を相続する場合です。このようなケースでは相続税の問題が生じる可能性が高いため、相続による名義変更の前に分筆登記を行う際は、税理士、土地家屋調査士、司法書士と綿密に打ち合わせを行うことをおすすめします。