遺言者は遺言書を作成する際、相続財産について「ご自身の財産を誰にどれほど取得してもらうか」といった点については、十分に検討されることでしょう。しかし、意外と見落とされがちなのが「遺言執行者を誰にするか」という点です。遺言執行者とは、遺言の内容どおりに財産の名義変更を行ったり、相続人に財産を引き渡したりする、いわば相続手続きの責任者の役割を担う者です。遺言執行者は、遺言の内容を実現するうえで非常に重要な役割を負っています。
遺言執行者は、原則としてどなたでも就任することができます。そのため、財産を相続する相続人の中から選任されることも珍しくありません。また、遺言書の作成に関わった司法書士が就任するケースも多く見られます。以下では、親族が遺言執行者に就任する場合と、専門家が就任する場合のメリット・デメリットを挙げていきます。
親族が遺言執行者になる場合
メリット
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故人の意向をよく理解している
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報酬を抑えられることが多い
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相続人間に信頼関係があれば、手続きがスムーズに進むこともある
デメリット
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相続人の一人が遺言執行者になると、他の相続人が不信感を抱くことがある
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手続きに関する専門知識が必要となり、途中で手に負えなくなるケースが多い
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相続人間に感情的なしこりがある場合、連絡役を担うことによる精神的負担が大きくなる
実務では、親族が遺言執行者に就任したものの、途中で手続きの進行に行き詰まり、専門家に手続きを委任するケースも少なくありません。
専門家(司法書士)が遺言執行者になる場合
メリット
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法的手続きに精通しているため、スムーズかつ正確に進められる
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相続人同士の事務連絡を、中立的な立場で行える
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不動産が複数ある場合や、会社経営、預貯金が多数ある場合など、複雑な財産にも対応可能
デメリット
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報酬が発生する
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親族ほど、故人や家族間の事情を細かく把握していない場合がある
どちらを選ぶべきか
相続人同士の関係が非常に良好で、財産内容も単純であれば、親族が遺言執行者になっても問題はありません。しかし、以下のいずれかに当てはまる場合は、専門家の選任が特におすすめです。
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相続人が多数いて、手続きが煩雑になる可能性が高い
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不動産が複数ある、または共有状態になっている
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遺言の内容が複雑である
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相続人同士の関係が良好とはいえない
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海外在住の相続人がいる
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親族が周囲に一切おらず、遺言者の死後に遺言の存在に気づいてもらえない可能性がある
専門家が遺言執行者に指定されている遺言書は、手続きのスピードが早く、トラブルが少ないという傾向があります。遺言書の内容を確実に実現するためにも、「誰を遺言執行者に指定するか」は非常に重要なポイントといえるでしょう。













