相続発生後に必要な戸籍が最小限で済む公正証書遺言

遺言には大きく分けて「自筆証書遺言」「公正証書遺言」があります。また自筆証書遺言には、遺言者が手書きで作成した遺言を自宅で保管する方法と、法務局に預ける「遺言書保管制度」があります。遺言の作成者が亡くなった後に、遺言者の除籍謄本と財産を相続する人の戸籍が必要なのは、上記のいずれの制度でも共通しています。しかし、必要な戸籍の種類は大幅に異なるのです。

自筆証書遺言

手書きの遺言「自筆証書遺言」では、自宅で保管する方法でも法務局に預ける制度でも、亡くなった遺言者の出生から死亡までの戸籍と相続財産の取得の有無に関わらず、一般的には法定相続人全員の戸籍が必要となります。自宅で保管していた手書きの遺言書は、裁判所で検認の手続きを受ける必要があります。検認手続きでは、家庭裁判所が、相続人全員に検認手続きの通知を送付する必要があります。遺言書の検認日を相続人全員に知らせるためです。

遺言書保管制度

法務局に自筆証書遺言を預ける遺言書保管制度でも、相続人のいずれかの方が遺言者の死亡後に遺言書を閲覧・証明書の交付請求をすれば、閲覧・証明書交付請求の事実を法務局が全ての相続人に通知するために、同様の戸籍の取得・提出が求められます。

公正証書遺言

公正証書遺言では、一般的には、遺言者の死亡が記載された戸籍及び財産を取得する相続人の戸籍のみで、相続手続きを進められるケースが多くあります。日本に帰化された方にとっては、必要書類が少なく済むことが大きな利点となる場合があります。

本来の相続手続では、遺言の有無に関係なく死亡者の戸籍を出生から死亡まで取得する必要があります。しかし、日本に帰化した方は帰化後の戸籍しか作成されません。そうなると帰化前の外国の戸籍または証明書を取得する必要があるのです。これは相続人にとって大きな負担となり、相続手続きが長期化・複雑化する場合があります。国によっては戸籍や証明書の取得者を極めて制限しているからです。請求しても審査の結果、請求を却下されてしまうこともあるようです。仮に取得できても請求から取得まで半年近くかかってしまう事例もあります。

以上の理由から、帰化した方には相続人の負担を大幅に軽減するためにも、公正証書遺言の作成を検討するメリットがあると考えられます。これは相続人の間の仲が円満でも、相続財産を法定相続分通りに取得してもらう場合でもです。

ただし、実際の預貯金解約や相続登記の手続では、相続の状況や各機関の運用によって必要書類は異なるため、個別の事情に応じた確認が必要です。それでも自筆証書遺言と比較すると、公正証書遺言は、相続人の戸籍収集負担を軽減できる可能性がある制度の一つといえます。

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